※次年の記事はこちら「2023年の日本経済の見通し【288号】」
謹んで新春のお祝詞を申し上げます。
昨年中は格別のご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。
鈍い回復となった2021年の日本経済
昨年(2021年)の日本経済は、一昨年(2020年)の大きな落ち込みからの鈍い回復にとどまりました。OECDによる成長率予測によると、昨年の日本の実質GDP(国内総生産)成長率は、前年比1.8%程度のプラスになったものの、一昨年の落ち込み(マイナス4.5%)の半分も穴埋めすることができませんでした。
昨年は、緊急事態宣言の発令による消費の低迷が続いたうえ、半導体などの部品不足により自動車も減産に陥るなど、ワクチン接種が遅れたことにより、新型コロナ感染拡大の波に振り回された一年でした。GDP成長率は、第3波の影響を受けた2021年1~3月がマイナス成長(マイナス0.7%)、第4波が到来した4~6月は0.5%のプラス成長になったものの、第5波に襲われた7~9月は再びマイナス成長(マイナス0.9%)となりました。10月~12月は、感染者数が減少し、比較的高めの成長になったと考えられますが、通年では、鈍い回復になったと考えられます。
日本経済はコロナ前の水準を回復できるのか?
一方、今年(2022年)の日本経済については、一昨年の大きな落ち込み(マイナス4.5%)から緩やかに回復することを期待しています。
日本経済には、昨年秋以降、追い風が吹いています。感染者数が減少し、衆議院選挙の与党勝利により巨額の経済対策が決定しました。米国経済が堅調であるうえ、供給制約の改善に伴い生産も増加に転じています。
そして日本経済の先行きを考える上で重要になるのが、GDPの過半を占める個人消費の動向です。個人消費は回復が遅れており、今年も新型コロナ感染拡大の影響を受けることが予想されますが、国民へのワクチン接種が進み、感染対策も定着してきたうえ、今年は経口薬も普及することが期待されており、消費への影響は、昨年ほどではないと思われます。
日本経済の回復が順調に進めば、今年のGDPは前年比3%程度のプラス成長となり、コロナ禍前(2019年)の水準まで回復することも可能であると考えています。
懸念材料は変異ウイルスとインフレ
しかし、新型コロナの変異ウイルス「オミクロン型」の感染拡大による消費への影響には警戒が必要です。感染拡大による行動制限が開始されますと、GoTo再開の先送りや給付金が消費に回らなくなるなど経済対策の効果が先送りされるほか、コロナ禍でため込まれた30兆円の貯蓄の一部が消費に回るとの思惑も期待外れとなる可能性があります。
そして、物価の上昇(インフレ)への懸念も高まっています。エネルギー価格の上昇などにより、日本の昨年11月の企業物価指数は、前年同月比で9%も上昇しましたが、消費者物価指数の上昇率は0.6%にとどまりました。企業側がコストの上昇を小売価格に転嫁できなければ、企業の利益を圧迫し、政府が求める賃上げも困難になります。また、賃金が上がらなければ、ガソリンや食品などの価格上昇は、消費者にとって負担となります。
さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)のテーパリング終了後の利上げ前倒しによる金融市場への影響にも注意すべきですし、中国における不動産市場の低迷など中国経済をめぐる諸問題もリスクとして考えられます。
以上のことから、2022年の日本経済は緩やかに回復することで、企業の売上も回復に向かうとの期待が膨らみます。しかし、インフレの影響により仕入コストが上昇するため、価格転嫁が難しい中小企業の経営環境は厳しさが増してくると思われます。新型コロナの感染再拡大とインフレへの備えが、2022年の中小企業経営に求められることになりそうです。
本年も何とぞよろしく、ご愛顧のほどお願い申し上げます。
(小島淳次)