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[186号]事業承継税制の特例の創設

〔事業承継税制の特例を含む改正法案が成立へ〕

  平成30年度税制改正を行う「所得税法等の一部を改正する法律案」が、2月28日の衆院本会議で可決され、参院へ送付されました。同法案は、3月31日までの年度内に成立する見通しです。

  平成30年度税制改正の注目制度の1つである事業承継税制の抜本的な見直しも、「非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予の特例制度」を創設することとして、改正法案に盛り込まれています。

  新しい納税猶予の特例制度(案)は、中小企業の経営者の高齢化が急速に進展する中で、集中的な代替わりを促すため、10年間の特例措置として、事業承継時に贈与・相続により取得した非上場株式等に係る贈与税・相続税の負担がゼロになる制度です。

 

〔事業承継税制の特例(案)のポイント〕

  非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予の特例制度(案)のポイントは下記の通りです。

1.事業承継に係る税負担を最小化

  納税猶予の対象になる株式数の上限(2/3)を撤廃し全株式を猶予対象に。また、納税猶予割合(現行80%)が100%に拡大されることで、事業承継時の税負担はゼロとなります。

2.対象者を拡大

  対象者を、一人の先代経営者から一人の後継者への贈与・相続に限定せず、親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象に拡大されることで、多様な事業承継が可能になります。

3.雇用確保要件を弾力化

  雇用確保要件※を満たせなかった場合でも納税猶予の継続が可能になり、制度を躊躇する要因となっていた雇用確保要件が実質的に撤廃されます。

  (満たせなかった場合には理由報告が必要。経営悪化が原因である場合等には、認定支援機関による指導助言を受ける必要があります。)

  ※ 雇用確保要件:事業承継後5年間平均で、雇用の8割を維持すること。

4.経営環境の変化に対応した減免制度の創設

  後継者が自主廃業や売却を行う際、贈与税・相続税が課税されることになりますが、経営環境の変化により株価が下落した場合には、売却額や廃業時の評価額を基に納税額を計算し、事業承継時の株価を基に計算された納税額との差額が減免されるため、経営環境の変化による将来の不安が軽減されます。

以上のほか、相続時精算課税制度の適用範囲の拡大などの措置が講じられています。

 

〔特例の対象は10年以内の承継(承継計画を5年以内に提出)〕

  事業承継税制の特例は、今後5年以内に「特例承継計画(仮称)」を提出し、10年以内に実際に承継を行う者が対象となります。

  新制度は、平成30年1月1日から平成39年(2027年)12月31日までの贈与又は相続等について適用されますが、新制度を適用するためには、平成30年4月1日から平成35年(2023年)3月31日までの間に「特例承継計画」を都道府県に提出する必要があります。

  この「特例承継計画」とは、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けた特例認定承継会社が作成した計画であって、当該特例認定承継会社の後継者、承継時までの経営見通し等が記載されたものをいいます。

  早期の事業承継準備を促すという趣旨から、計画書の提出が認められるのは5年間に限られていますので、事業承継の可能性のある方は、とりあえず計画書を提出することをご検討いただきたいと思います。

  税理士法人中央総研は、中小企業経営力強化支援法に基づく経営革新等支援機関の認定を受けていますので、特例承継計画の作成を検討する際は、お気軽にご相談ください。

(小島淳次)

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