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3年連続マイナスとなった実質賃金【339号】

給与増も、実質賃金0.2%減

厚生労働省が2月5日に発表した毎月勤労統計調査(速報)によりますと、2024年の「現金給与総額」は前年比2.9%増で、4年連続の増加となりました。現金給与総額の伸び率は、33年ぶりの高い伸び率でしたが、物価上昇の伸び率(+3.2%)を下回ったため、2024年の「実質賃金」は前年比0.2%減でした。実質賃金とは、現金給与総額(名目賃金)から物価の影響を差し引いたもので、実質賃金の減少は、賃金の伸びが物価の上昇に追い付かなかったことを表します。2024年の実質賃金の減少率は、前年の減少率(2.5%減)と比べて縮小したものの、3年連続の減少となりました。

2024年の基本給は2.1%増

2024年に現金給与が大きく増加した背景には、2024年の春闘(春季労使交渉)における平均賃上げ率が5%台となり、1991年以来33年ぶりの高さとなったことがあると思われます。ただ、2024年の現金給与の増加率(+2.9%)は、春闘における平均賃上げ率(+5.1%)を大きく下回りました。これは、雇用者のうち労働組合に加入している人の割合は16.3%であるため、春闘の結果は全労働者の一部を捕捉しているに過ぎず、春闘の結果だけでは賃金動向を捉えることはできないことを表しています。

現金給与総額のうち基本給などの「所定内給与」は、2024年通年の伸びが2.1%増であり、2024年7月から12月の各月の伸びが2.4%増~2.7%増であったことから、給与の基調的な伸びは2.5%程度であったと考えられます。しかも、現金給与総額のうち賞与などの「特別に支払われた給与」は、2024年の伸びが6.9%増で、所定内給与の伸びを上回っていたことから、基本給を抑えつつ、賞与を増額する動きが強まっていたと思われます。

事業所規模別賃金の格差拡大

2024年の実質賃金は、0.2%減とプラスまであと一歩というところでしたが、従業員30人以上の事業所に限れば0.1%増とプラスに転換していました。これは、従業員30人以上の事業所に限ってみると、基本給などの所定内給与が2.8%増(5人以上2.1%増)となり、現金給与総額が3.3%(5人以上2.9%増)増えたことで、給与の伸びが物価上昇の伸び率(+3.2%)を上回ったためです。このことから、2024年の賃上げでは、事業所規模が大きいほど賃上げ率が高かったことが明らかです。

大企業が円安効果などで業績を改善している一方、小規模な企業は業績が伸びないなか、人手確保のために賃上げを行った可能性が高いと思われます。今年も、大企業においては大幅な賃上げが実施されることが予想されるため、大企業ほど賃上げをすることができない企業との間で、賃上げの幅に差が生じ、賃金の格差が拡大することが懸念されます。

(小島淳次)

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2025年01月27日 令和6年分 所得税確定申告【338号】

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