2023年実質GDP、1.9%増
内閣府が3月11日に発表した2023年暦年の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質の成長率が前年比1.9%増となりました。
実質成長率への寄与度は、内需がプラス0.9ポイント、外需がプラス1.0ポイントで、内需・外需ともに成長率を押し上げました。
内需では、コロナ禍からの経済活動の回復で、個人消費が0.6%伸びて成長率を0.4ポイント押し上げたほか、設備投資も2.1%伸びて成長率を0.4ポイント押し上げました。外需では、輸出が3.0%増えて成長率を0.7ポイント押し上げたほか、輸入が1.3%減って成長率を0.3ポイント押し上げました。
物価高で名目GDPが大きく成長
2023年のGDPは、物価変動も含めた名目の成長率が大きく伸びました。2023年の名目成長率は前年比5.7%増となり、バブル景気が終了した1991年(プラス6.5%)以来の高さでした。
実質成長率がプラス1.9%でしたので、物価変動も含めた増加率である名目成長率を大きく押し上げた要因は「物価」の上昇です。GDP算出で物価の変動分を調整するときに用いられるGDPデフレーターは、前年比3.8%上昇となり、GDP統計で遡ることができる1981年以降、最も高い伸び率を記録しました。前年2022年の名目成長率が1.3%で、GDPデフレーターが前年比0.3%上昇であったことと比較しますと、2023年の物価の上昇率が極めて高く、物価高が名目の成長率を急激に押し上げたと言えます。
(注)2023年は2023年10~12月期2次速報値
個人消費は3四半期連続マイナス
前述の通り、2023年の日本のGDPは実質・名目ともに3年連続のプラス成長となりましたので、日本経済がコロナ禍から順調に回復している印象を受けます。
しかし、四半期別の実質の季節調整値は、2023年1~3月期と4~6月期がともに前期比1.0%増のプラス成長だったにもかかわらず、7~9月期が前期比0.8%減でマイナス成長となったうえ、10~12月期はプラス成長となったものの、伸び率は前期比0.1%増にとどまりました。2023年の日本経済は、緩やかな回復傾向にあったものの、その回復のペースは年後半に減速しています。
前期比の寄与度では、内需が2023年4~6月期マイナス0.7ポイント、7~9月期マイナス0.8ポイント、10~12月期マイナス0.1ポイントで、内需に関する項目が成長率を押し下げました。特にGDPの過半を占める個人消費は、前期比で2023年4~6月期0.7 %減、7~9月期0.3%減、10~12月期0.3%減と3四半期連続のマイナスでした。この個人消費の落ち込みは、長引く物価高による消費の冷え込みに加え、暖冬の影響やコロナ禍からの回復に伴う特需が一巡したことも背景にあると考えられます。
(注)2023年10~12月期は2次速報値
2024年1~3月期はマイナス成長の可能性
個人消費が落ち込むなか、2023年10~12月期の四半期GDP成長率をプラスに押し上げた項目が設備投資でした。個人消費に次ぐ民間需要の柱である設備投資は、10~12月期が前期比2.0%増と、GDP成長率を0.3ポイント押し上げました。さらに、輸出が前期比2.6%増となり、3四半期連続でプラスとなっています。GDPの計算上は輸出に分類されるインバウンド消費の増加も押し上げ要因となりました。
しかし、2024年1~3月期においては、自動車の品質不正問題が四半期GDP成長率を押し下げそうです。自動車の生産や出荷の停止による新車販売の減少に加え、高い伸び率となった10~12月期の反動減が輸出を減少させるほか、設備投資を押し下げると考えられます。物価高により個人消費が振るわないなか、設備投資と輸出が減少することで、2024年1~3月期の四半期GDP成長率は再びマイナス成長になる可能性があります。
(小島淳次)