1.1%増に減速した日本のGDP成長率
内閣府から2022年の国内総生産(GDP)の速報値が公表されました。
2022年の実質経済成長率は1.1%にとどまり、2021年の2.1%と比較して、伸び率が鈍化しました。2021年の成長率(2.1%)は、新型コロナウイルス禍当初の2020年の大幅な落ち込み(▲4.3%)からの反動があったとはいえ、2022年の回復は鈍いものとなりました。
2022年1月に公表されていた国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しでは、2022年の日本の成長率は3.3%と予測され、高い成長率が期待されていました。しかし、2022年の日本の成長率は1.1%にとどまり、IMFの予想を大幅に下回って、期待外れに終わったと言えます。
コロナ前の水準に届かなかった2022年GDP
2022年暦年の実質GDPの実額については、546.0兆円と前年(540.2兆円)を上回ったものの、コロナ前(2019年)の552.5兆円に届きませんでした。日本は、2022年もコロナ禍の落ち込みを取り戻すことができず、海外と比べると回復に時間がかかっています。
成長率を四半期別でみますと、4〜6月期と10〜12月期がプラス成長であったのに対し、1〜3月期と7〜9月期がマイナス成長になっており、2022年の日本経済は一進一退の状況が続いており、その結果として、鈍い回復となりました。
成長率を押し下げた海外需要
GDP成長率が減速した要因の一つには、外需による押し下げもありました。実質GDPの内外需要の寄与度は、国内需要が1.7ポイントのプラスだったのに対し、海外需要は0.6ポイントのマイナスでした。
輸出が前年比4.9%増えたにもかかわらず、輸入が前年比7.9%増え、輸入の伸びが輸出の伸びを上回りました。そのため、輸出から輸入を差し引いて計算する外需がマイナスの寄与となりました。
内需についても、増減率の内訳を項目別にみますと、GDPの過半を占める個人消費が、前年比で2.1%増え、2021年の増加率(0.4%増)を上回りました。内需のもう一つの柱である設備投資も1.8%増えたほか、政府消費も1.5%増えました。一方、公共投資が7.1%減、住宅投資も4.7%減と落ち込みました。
インバウンド消費の回復がGDPにプラス寄与
2022年の成長率は期待外れに終わりましたが、日本経済はコロナ禍からの回復が緩やかに進んでいます。2022年10〜12月期の実質GDP速報値(年率)は、前期比0.6%増でした。個人消費が前期比0.5%増えたほか、輸出も1.4%増えました。GDPの計算上、輸出に分類するインバウンド(訪日外国人)消費も伸び始めています。2023年の日本経済は、サービス消費やインバウンドを中心に経済活動が正常化することで、回復傾向が続く可能性は高いと思います。ただ、このような明るい材料がある一方で、不安材料もあります。
物価上昇で実質雇用者報酬1.4%減
目下の懸念材料は、物価上昇に賃金が追い付いていないことです。消費者の購買力の低下は、個人消費に悪影響を与えます。
2022年の雇用者報酬は、名目で前年比2.1%増と高い伸び率を示しましたが、物価の影響を除いた実質では1.4%減と大きく落ち込みました。今年の春闘では、賃上げ機運が高まっていますので、2023年も名目賃金は上がると思いますが、2022年にマイナスになった分を取り戻すほど実質賃金が上がるのは難しいと思います。
足元では、設備投資も減少に転じています。海外経済の減速懸念が影響していると思われます。
緩やかに回復が続いている日本経済ですが、物価上昇の個人消費への影響や海外経済の減速懸念など課題も山積しており、日本経済の先行きには不透明感が募ります。
(小島淳次)