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配偶者居住権の仕組みと相続税への影響【326号】

配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、夫婦の一方が死亡した場合に、残された配偶者が亡くなった人が所有していた建物に亡くなるまで又は一定の期間、無償で居住することができる権利です。相続があった場合で、遺産に占める自宅の価値が高いときは、そこに住んでいた配偶者は自宅を売却することになるか、自宅以外の財産を取得できなくなるケースがありました。民法改正により、自宅の権利を「居住する権利」と、「所有する権利」とに分けて相続できるようになりました。

配偶者居住権と所有権に分けて相続

相続財産は、法定相続分(配偶者に財産の1/2、残り1/2を子供が等分)に従って分けることが原則です。仮に、夫が5,000万円(現金3,000万円・自宅2,000万円)の財産を遺して亡くなり、妻と子供1人が遺産を相続するとします。この場合、遺産の1/2にあたる2,500万円を妻と子供が取得することになりますが、妻がそのまま住み続けるため自宅を相続すると、現金の相続分は500万円だけとなってしまいます。そこで、配偶者居住権を設定した場合には、妻が配偶者居住権(1,000万円)、子供が居住権付所有権(1,000万円)とそれぞれ現金1,500万円という遺産分割を行うことが可能となります。

配偶者居住権の設定要件

配偶者居住権が成立するためには、以下1~3の要件を満たす必要があります。

  • 残された配偶者が亡くなった人の法律上の配偶者であること
  • 配偶者が、亡くなった人の所有していた建物に居住していたこと
  • 遺産分割・遺贈・家庭裁判所の審判のいずれかにより配偶者居住権を取得したこと

配偶者居住権と二次相続

一次相続において妻が相続した配偶者居住権は、相続税の課税対象となります。しかし、妻が相続する財産は、配偶者の税額の軽減により、① 1億6,000万円までの財産 ② 全財産の1/2まで、のいずれか多い金額まで相続税はかかりません。妻の相続(二次相続)時には配偶者居住権は消滅するため、一度も相続税を支払うことなく、子供に配偶者居住権を移行することも可能です。ただし、必ずしも配偶者居住権を設定することが節税となるというわけではありません。

(中嶋)

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