ニュース

簡易課税選択届出書を提出した後の注意点【325号】

インボイス制度により消費税に注目が集まっています。消費税の課税制度には、預かった消費税から支払った消費税を差し引いた額を納める原則的な一般課税と基準期間における課税売上高が5,000万円以下の場合は課税売上高を基に計算する簡易課税があります。

この簡易課税制度は次の通りの手続きで適用されますが、この選択届出書を提出したのちに色々な状況で会社の経理担当者や税務担当者が替わっている場合には、最後の注意事項が重要となります。

簡易課税制度の適用を受けようとする事業者は「消費税簡易課税制度選択届出書」(以下「選択届出書」といいます。)を、納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。選択届出書の提出時期は、原則的な取扱いと事業を開始した場合の取扱いとに分かれ、それぞれ次のようになります。

 1.原則的な取扱い

簡易課税制度の適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに選択届出書を提出します。つまり、事前提出ということです。なお、提出した選択届出書の効力は「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出するまでの間有効です。

2.事業を開始した日の属する課税期間の取扱い

事業を開始した日の属する課税期間に選択届出書を提出する場合には、適用開始課税期間を明確にすることにより、事業を開始した日の属する課税期間またはその翌課税期間のいずれから簡易課税を開始するかを選択することができます。選択届出書は原則として事前提出ですが、事業を開始した日の属する課税期間について適用を受けようとする場合には、事前に提出をすることができないため、このような取扱いが認められています。

3. 提出時期が土日の場合

法人税や所得税の申告書や届出書には、提出期限が土日祝日などの税務署の閉庁日である場合には、その翌月曜日が提出期限となるものがあります。これに対して、簡易課税の選択届出書は、適用を受けようとするとする課税期間の初日の前日(上記の例1・例2においてはX2.3.31)が土日祝日の場合であっても、その提出時期は延長されず、X2.3.31となるため注意が必要です。したがって、税務署の窓口で提出する場合には、それより前の開庁日に持参しなければなりません。なお、電子申告の場合には送信日、郵送の場合には消印の日により判断するため土日でも送信や提出は可能ですが、余裕をもって提出しましょう。

4.簡易課税を取りやめる場合

簡易課税制度の適用を受けている事業者が、その適用をやめようとする場合には、その課税期間の初日の前日までに、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。なお、簡易課税制度の適用を受けている事業者は、事業を廃止した場合を除き、「消費税簡易課税制度選択届出書」の効力が生ずる課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出することはできません。

5.注意事項【消費税法基本通達 13-1-3 簡易課税制度選択届出書の効力

「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している場合であっても、基準期間の課税売上高が5,000万円を超える場合には、その課税期間については、簡易課税制度は適用できませんのでご注意ください。なお、この届出書を提出した事業者のその課税期間の基準期間における課税売上高が5,000万円を超えることにより、その課税期間について簡易課税制度を適用できなくなった場合またはその課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下となり免税事業者となった場合であっても、その後の課税期間において基準期間における課税売上高が1,000万円を超え5,000万円以下となったときには、その課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出している場合を除き、再び簡易課税制度が適用されます。

6.まとめ

上記の通り簡易課税制度の適用を受けている場合でも、基準期間の課税売上高の状況で効力が失われている場合があります。会社の色々な状況でこの届出の提出状況が把握されていない場合に思わぬ課税がされますので注意が必要となります。

(大橋)

新着情報

税理士法人中央総研 知識と経験を活かし、お客さまに寄り添う
NEW
2024年07月22日 配偶者居住権の仕組みと相続税への影響【326号】
一覧に戻る
OLD
2024年06月20日 令和6年度税制改正(インボイス関連)【324号】

別の記事も読む

行事