物価高で減少した2023年の消費支出
総務省が今年2月6日に発表した家計調査報告によりますと、2023年平均の2人以上世帯の消費支出は、1世帯当たり月293,997円で、物価変動の影響を除いた実質で前年比2.6%の減少となりました。2020年以来3年ぶりの減少となりましたが、2023年の名目消費支出は前年比1.1%増加していることから、2023年の実質消費の減少は、物価高の影響を受けての落ち込みとなります。この物価の動きを把握するために、全国の世帯が購入する財やサービスなどの価格の変動を測定した指標(消費者物価指数)を以下で確認します。
41年ぶりの伸び率となった2023年の消費者物価
1月19日に公表された2023年の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が105.2となり、前年比で3.1%上昇しました。伸び率は2022年のプラス2.3%から拡大し、第2次石油危機の影響があった1982年のプラス3.1%に並ぶ41年ぶりの高い伸び率となりました
10大費目の前年比を見てみますと、政府による電気・ガス料金の抑制策があった「光熱・水道(6.7%低下)」以外の費目が前年比で上昇しており、幅広い費目で価格が上昇したことになります。特に「生鮮食品を除く食料」は前年比8.2%上昇し、1975年の(13.9%上昇)以来48年ぶりの上げ幅となり、総合指数の前年比(3.2%上昇)を1.86ポイント押し上げました。「家具・家事用品」も前年比で7.9%上昇していることから、食品や日用品の価格が大きく上昇した結果となっています。
食料支出、名目増も実質減
この物価上昇に対する消費行動への影響を確認するために、消費支出(二人以上の世帯)を10大費目に分類したものが、以下の表となり、10大費目のうち7費目で実質の支出が前年を下回りました。特に物価上昇の影響が大きかった費目が「食料」です。「食料」では「外食」が増加するなど名目の支出が前年比5.7%も増加しました。ただ物価が前年比で8.1%上昇したため、実質の支出が2.2%減少しました。魚介類が8.3%減少し、調理食品が3.8%減少したほか、肉類、野菜・海藻など幅広い費目でも支出が減少しました。
宿泊料などへの支出が増えた「教養娯楽」は実質の支出が3.4%増と、外出を伴う支出が伸びているものの、「住居」「家具・家事用品」「教育」などの費目は、名目の支出が前年を下回り、消費者の支出は減少しています。食料など、支出を減らすことが難しい生活必需品への支出増に対して、多くの費目で選択的に支出を減らした消費者の動きが見られます。今年の春闘でも高めの賃上げが見込まれていますが、消費者の節約志向は根強いと見られ、物価の上昇が続く限り、賃上げが実現しても、個人消費の押し上げは限定的なものになると思われます。
(小島淳次)