いよいよ令和5年10月1日より消費税のインボイス制度が施行されます。現在は、インボイス制度に必要な登録番号を取得して適格請求書発行事業者に登録する手続き期間となっています。(令和5年3月31日申請期限)
この登録について、現在消費税の課税事業者である方々は申請・登録するほうがよろしいかと思います。なお、適格請求書発行事業者に登録すると次のような義務が発生し、違反すると罰則もあるため注意が必要です。
適格請求書発行事業者(売手側)の義務
- 買手側(課税事業者)の求めに応じて、適格請求書又は適格簡易請求書を交付する義務があります。(消法57の4①②)
- 買手側(課税事業者)に値引きや割戻し等の売上げに係る対価の返還等を行った場合には、適格返還請求書を交付する義務があります。(消法57の4③)
- ①及び②の書類に誤りがあった場合には、修正したこれらの書類を交付する義務があります。(消法57の4④)
- 交付した上記①から③の書類の写し又は電子データを保存する義務があります。(消法57の4⑥)
適格請求書発行に関する罰則
適格請求書等を交付するに当たって、次に掲げる行為を行った者については、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。(消法57の5、65四)
- 適格請求書発行事業者の登録を受けていない者が、インボイス(適格請求書)と誤認されるおそれのある書類を交付し又は電子データを提供すること
- 適格請求書発行事業者が、偽りの記載をしたインボイス(適格請求書)を交付し又は電子インボイスを提供すること
適格請求書発行事業者に登録する場合の注意点
1.現在課税事業者が適格請求書発行事業者に登録する場合の注意点
課税事業者が適格請求書発行事業者に登録した場合、課税事業者を選択した状態となります。そのため、基準期間の課税売上高が1千万円以下になっても課税事業者となり、当期は消費税の納税義務があります。しかしながら、適格請求書発行事業者に登録していない課税事業者の場合は、同じく基準期間の課税売上高が1千万円以下になったときは免税事業者となりますので、当期は消費税の納税義務はありません。よって、当期の課税売上高が1千万円以下になった場合は、2期後に備えて登録について検討し、登録を取り消す際は、届出書の提出期限に気を付けましょう。なお、取り消しをした場合、買手側より適格請求書の発行を依頼されても、発行する事ができません。従って、買手側は消費税の仕入税額控除を受けることができません。
2.現在免税事業者が適格請求書発行事業者に登録する場合の注意点
免税事業者が適格請求書発行事業者に登録した場合は、課税事業者を選択した状態になるため、消費税の納税義務が発生します。
3.現在免税事業者が適格請求書発行事業者に登録しない場合の注意点
買手側(課税事業者)から、次の様な事を要求される可能性があります。
- 適格請求書発行事業者になる事を強要
- 取引価格の値下げ(消費税分を不払い等)
- 取引停止
以上のような行為は、下請法上、建設業法上、独占禁止法上、問題となるおそれがあります。この点については、令和4年3月8日に改訂された財務省、公正取引委員会、経済産業省、中小企業庁、及び国土交通省の連名で公表された【免税事業者及びその取引のインボイス制度への対応に関するQ&A】に基本的な考え方が示されていますので、参考にしてください。
ここで、令和4年4月1日より施行されている現行の消費税法について、課税対象は次の要件をすべて満たす取引となっております。(消法4)
- 国内取引であること
- 事業者が事業として行うものであること
- 対価を得て行うもであること
- 資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供であること
以上の要件は、インボイス制度が導入される令和5年10月1日に施行される法律の条文においても変更はありません。
よって、国内の事業者が③④の取引をすると、免税事業者であっても消費税の課税取引となるので、取引額に応じた消費税を上乗せして請求する事が原則です。
以上より、消費税法上の課税取引に関する要件に変更はないので、適格請求書発行事業者に登録していない課税事業者も適格請求書発行事業者に登録した事業者も免税事業者も、すべて消費税法第4条にあてはまる取引をしたときには、課税取引となるため消費税分を転嫁することが原則です。
まとめ
適格請求書発行事業者の登録にあたっては、各事業者はインボイス制度をよく理解し、検討して対応してください。
(大橋)