本記事では定額減税の対象者や概要をQ&A形式で詳しく解説していきます。
定額減税の概要
物価上昇による国民の経済的負担を軽減し、消費活動を支える目的で、所得税及び個人住民税の減税「定額減税」が実施されます。具体的には、納税者本人(居住者に限ります。)、同一生計配偶者又は扶養親族(いずれも居住者に限ります。)1人につき、令和6年分の所得税から3万円、令和6年度分の個人住民税から1万円の減税が行われます。
所得税定額減税Q&A
(国税庁「令和6年分所得税の定額減税Q&A」から抜粋)
①居住者
Q 居住者とは、どのような人をいうのですか。 |
A 居住者とは、国内に住所を有する個人、又は現在まで引き続き1年以上居所を有する個人をいいます。
②同一生計配偶者
Q 同一生計配偶者とは、どのような人をいうのですか。 |
A 同一生計配偶者とは、その年の12月31日(納税者が年の中途で死亡し又は出国する場合は、その死亡又は出国の時)の現況で、納税者と生計を一にする配偶者(青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていない人又は白色申告者の事業専従者でない人に限ります。)で、年間の合計所得金額が48万円(給与所得だけの場合は給与等の収入金額が103万円)以下の人をいいます。
③扶養親族
Q 扶養親族とは、どのような人をいうのですか。 |
A 扶養親族とは、その年の12月31日(納税者が年の中途で死亡し又は出国する場合は、その死亡又は出国の時)の現況で、次の4つの要件の全てに当てはまる人をいいます。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)であること。
- 納税者と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること。
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
④16歳未満の扶養親族に係る月次減税㊟
㊟「月次減税」とは、令和6年6月1日以後最初に支払う給与等(賞与を含む)に係る源泉徴収税額から行う定額減税額の控除をいいます。
Q 16歳未満の扶養親族については、月次減税額の計算に含めますか。 |
A 基準日在職者㊟の提出した扶養控除等申告書(住民税に関する事項)に氏名等が記載されている16歳未満の扶養親族のうち、居住者である人は月次減税額の計算に含めることとされています。
㊟「基準日在職者」とは、令和6年6月1日現在、給与の支払者のもとで勤務している人のうち、給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の甲欄が適用される居住者の人(その給与の支払者に扶養控除等申告書を提出している居住者の人)をいいます。
⑤扶養控除等申告書に記載していない16歳未満の扶養親族に係る月次減税
Q 16歳未満の扶養親族について、所得税の計算に影響しないことから、扶養控除等申告書に記載していない従業員がいます。このような人の扶養親族を月次減税額の計算に含めるためにはどうすればいいですか。 |
A 給与等の支払者は、基準日在職者から令和6年6月1日以後最初の給与等の支払日の前日までに提出された扶養控除等申告書に記載された扶養親族を、月次減税額の計算に含めることになり、この申告書に記載された扶養親族には、「住民税に関する事項」に記載された16歳未満の扶養親族も含むこととされています。
したがって、基準日在職者は、令和6年6月1日以後最初の給与等の支払日の前日までに扶養控除等申告書の「住民税に関する事項」に16歳未満の扶養親族を記載して、再提出することで、その扶養親族を月次減税額の計算に含めることができます。
なお、扶養控除等申告書の再提出に代えて、「令和6年分源泉徴収に係る定額減税のための申告書」を提出することによっても、16歳未満の扶養親族を月次減税額の計算に含めることができますが、この場合には、年末調整の際にその16歳未満の扶養親族を「令和6年分年末調整に係る定額減税のための申告書」へ記載して提出する必要があります(扶養控除等申告書の「住民税に関する事項」に記載していれば、異動がない限り、年末調整の際に申告書を提出する必要はありません。)。
⑥基準日の前に死亡した扶養親族に係る月次減税
Q 令和6年1月1日の時点で扶養親族であった親族が、令和6年5月に亡くなったのですが、この親族は月次減税額の計算に含めますか。 |
A 令和6年6月1日以後最初の給与等の支払日の前日までに死亡した令和6年分の扶養親族についても、その親族の死亡の日の現況で扶養親族であると判定されるのであれば、月次減税額の計算に含めることとされています。
⑦扶養親族の人数が変更になった場合
Q 令和6年7月以降に扶養親族の数が変わる場合は、月次減税額も変わることになりますか。 |
A 月次減税額は、本人分30,000円に、同一生計配偶者等の数により計算した一定額(1人につき30,000円)を加算して算出することとされており、この同一生計配偶者等の人数については、最初の月次減税事務を行うときまでに提出されている扶養控除等申告書又は「令和6年分源泉徴収に係る定額減税のための申告書」の記載内容に基づき判定し、これにより算出した月次減税額をもって控除を行うこととされています。
したがって、例えば、7月に子の出生によって扶養親族の人数が増え、令和6年6月と7月とでは扶養親族の人数が異なることとなっても、月次減税額の増額は行いません。
なお、こうした人数の異動により生ずる定額減税額の差額は、年末調整又は確定申告により精算されることになります。
⑧所得制限を超える人に対する定額減税
Q 定額減税の適用には所得制限があるとのことですが、合計所得金額が1,805万円を超える人についても、主たる給与の支払者のもとで定額減税の適用を受けるのですか。 |
A 合計所得金額が1,805万円を超える人であっても、主たる給与の支払者のもとでは、令和6年6月以後の各月(日々)において、給与等に係る控除前税額から行う控除(月次減税)の適用を受けることになります。
一方、合計所得金額が1,805万円を超える人については、年末調整の際に年調所得税額から行う控除(年調減税)の適用が受けられませんので、年末調整の際にそれまで控除した額の精算を行うことになりますが、主たる給与の支払者からの給与収入が2,000万円を超える人は年末調整の対象となりませんので、その人は確定申告で最終的な年間の所得税額と定額減税額との精算を行うこととなります。
⑨所得制限を超える人から定額減税不要の申出があった場合
Q 給与収入以外の所得により、令和6年分の合計所得金額が1,805万円を超えることが明らかであり、年末調整時に定額減税の適用を受けることができないので、月々の給与等から月次減税額を控除しないでほしいという申出が従業員からありました。
この場合、従業員からの申出に従い、月次減税額を控除しなくてもいいですか。 |
A 給与所得者については、主たる給与の支払者のもとで、令和6年6月1日以後最初に支払を受ける給与等に係る源泉徴収において、月次減税額を順次控除することとされています。
そして、合計所得金額が1,805万円を超えると見込まれるかどうかにかかわらず、主たる給与の支払者のもとで、令和6年6月以後の給与等に係る源泉徴収において、控除対象者は一律に減税額の控除を受けることになりますので、控除対象者自身が定額減税の適用を受けるか受けないかを選択することはできません。
⑩従たる給与に係る定額減税
Q 2か所から給与の支払を受けている人の従たる給与(乙欄適用給与)に係る源泉徴収税額について定額減税の適用を受けるには、どうしたらいいですか。 |
A 定額減税額は、主たる給与の支払者のもとでのみ控除されることになっていて、従たる給与の支払者のもとで控除されることはありません。
したがって、定額減税額のうち主たる給与の支払者のもとで控除しきれなかった金額がある場合には、確定申告の際に、主たる給与と従たる給与(給与所得以外の申告をする必要のある所得がある場合には、その所得を含みます。)を合わせたところで計算される年の所得税額との間で、控除しきれなかった金額を精算することになります。
⑪基準日の後に就職した人に対する定額減税
Q 令和6年6月2日以後に就職した人は、基準日在職者に該当しますか。 |
A 令和6年6月2日以後に就職した人については、基準日在職者に該当しません。
なお、このような人のうち扶養控除等申告書を提出した人は、月次減税額の控除を受けることはできませんので、通常は年末調整において定額減税額の控除(年調減税)を受けることになります。
⑫休職者に対する定額減税
Q 令和6年4月以前から引き続き勤務している従業員が、令和6年5月から3か月程度休職扱いとなったため、その間、給与を支払っていません。このような人は、基準日在職者に該当しますか。 |
A 休職扱いとされている従業員が、令和6年6月1日現在においてその給与の支払者から実際に給与の支払を受けていない状況にあるとしても、同日現在その支払者の従業員としての身分があり、かつ、その支払者に扶養控除等申告書を提出している限り基準日在職者に該当します。
なお、このような人については、主たる給与の支払者のもとで、その復職後実際に支払われる令和6年分の給与から月次減税額の控除を受けることになります。
⑬基準日在職者が再就職した場合
Q 他の給与の支払者のもとで基準日在職者であった人が、その後において再就職をした場合、再就職先での月次減税の適用関係は、どのようになりますか。 |
A 給与の支払者のもとで基準日在職者であった人が、その後において国内にある他の企業等へ再就職し、再就職先において主たる給与の支給を受ける場合については、月次減税は行わず、年末調整時に年調減税を行うことになります。
⑭退職した人(年末調整未了)の源泉徴収票への記載方法
Q 給与所得者が退職した場合(年末調整を完了した場合を除く。)に作成する源泉徴収票には、定額減税額等をどのように記載しますか。 |
A 令和6年6月1日以後に給与所得者が退職した場合には、源泉徴収の段階で定額減税の適用を受けた上、再就職先での年末調整又は確定申告で最終的な定額減税との精算を行うことになるため、「給与所得の源泉徴収票」の「(摘要)」欄には、定額減税等を記載する必要はありません。
なお、「源泉徴収税額」欄には、控除前税額から月次減税額を控除した後の実際に源泉徴収した税額の合計額を記載することになります。
⑮給与支払明細書への記載事項
Q 月次減税額の控除を行う際に交付する給与支払明細書には、どのような事項を記載しますか。 |
A 給与支払明細書には、実際に控除した月次減税額の金額を「定額減税額(所得税)×××円」、「定額減税×××円」などと、適宜の箇所に記載していただくことになります。
⑯給与支払明細書に月次減税額を記載するスペースがない場合
Q 給与支払明細書に、実際に控除した月次減税額の金額を記載するスペースがないのですが、どのようにすればいいですか。 |
A 余白がない場合など、給与支払明細書に実際に控除した月次減税額の金額を記載することが難しい場合には、別紙に「定額減税額(所得税)×××円」などと記載していただいても差し支えありません。
⑰所得税徴収高計算書(納付書)の記載方法
Q 月次減税額を控除前税額から控除したときは、所得税徴収高計算書(納付書)の記載はどのようにすればいいですか。 |
A 月次減税額を控除前税額から控除した場合であっても、所得税徴収高計算書(納付書)の記載方法は、特に従来と変わることはありません。
この場合、「税額」欄には、月次減税額を控除した後の金額(実際に納付すべき源泉徴収税額)を記載することになります。
個人住民税定額減税Q&A
(総務省「個人住民税の定額減税に係るQ&A集」から一部抜粋)
Q 個人住民税の定額減税を受けるために何か申請等をする必要はありますか。 |
A 個人住民税の定額減税を受けるために申請等をする必要はありません。
個人住民税の定額減税額は、市区町村が保有する税情報(確定申告書、市民税・県民税申告書、給与支払報告書、年金支払報告書等)を基に算出されます。
Q 定額減税が行われた場合の令和6年度分の個人住民税の徴収方法は、どのようになりますか。 |
A
給与所得に係る特別徴収の場合
令和6年6月分は徴収されず、「定額減税(後)の年税額」を令和6年7月分~令和7年5月分の11か月で均した税額が徴収されます。
普通徴収の場合
「定額減税(前)の年税額」を基に算出された第1期分(令和6年6月分)の税額から控除され、第1期分から控除しきれない場合は、第2期分(令和6年8月分)以降の税額から、順次控除され、徴収されます。
公的年金等に係る所得に係る特別徴収の場合
「定額減税(前)の年税額」を基に算出された令和6年10月分の特別徴収税額から控除され、控除しきれない場合は令和6年12月分以降の特別徴収税額から、順次控除され、徴収されます。(仮特別徴収税額からは控除されません。)
Q 令和6年1月2日以後に出生・死亡した扶養親族に係る取り扱いは、どのようになりますか。 |
A 令和6年度分の個人住民税に係る扶養親族の判定時期は、地方税法の規定に基づき、令和5年12月31日(令和5年中に死亡した場合には、その死亡の時)の現況によるとされているため、令和6年1月2日以後に死亡した扶養親族については定額減税の対象となりますが、同日以後に出生した扶養親族については定額減税の対象とはなりません。
Q 令和6年の年の途中に○○市区町村に転入してきましたが、定額減税はどうなりますか。 |
A 個人住民税の定額減税は、原則として、令和6年1月1日に住所のある自治体において行われます。
Q 個人住民税の定額減税は、ふるさと納税の限度額の算出に影響はありますか。 |
A 個人住民税の定額減税の影響はありません。
ふるさと納税の特例控除額の算定の基礎となる令和6年度分の住民税の所得割額は、定額減税前の所得割額とされるためです。
最後に
令和6年6月から、定額減税のうち月次減税事務(月次減税額を控除する事務)が始まります。
各社員について、
- 定額減税適用の有無
- 同一生計配偶者の有無
- 扶養親族の有無及び人数
上記の確認作業が大変重要となります。
(礒部)