撤回または終了
遺言は遺言者本人が単独で行う意思表示です。基本的にはいつでも撤回が可能です。
民事(家族)信託は、信託契約を終了させる場合、委託者と受託者の合意等が必要です。
財産の選択
遺言の場合は、遺言者の財産をAさんに相続させて、Aさんが亡くなった時はBさんに相続させる様な段階的な相続の指定はできませんが、民事信託の場合はそれが可能です。不動産の相続の際に、先ずは長男に承継をして長男の死後に孫などに承継させることも可能です。ただし、全ての財産が信託出来るわけでは無い為、農地などの譲渡に農業委員会の許可を要する場合には原則的に信託はできません。信託と遺言をうまく使い分けることも重要となります。
信託には家族の同意が不可欠
家族信託は柔軟に対応することができるため、希望する財産管理や財産継承に対応可能ですが、相続税対策として税額が軽減される訳ではなく、他の相続人より遺留分請求を受ける可能性があります。仕組みもやや煩雑なため、プロの関与が必須となり、受託者についても検討が必要です。不動産の名義が受託者となるため、将来において信託について知識が少ない親族とトラブルの発生の可能性も大きいといえます。家族に正しく理解をして頂き、その後に同意を求めることが望ましいと言えます。
信託の終了事由
家族信託の終了は信託法において、どのような場合に終了となるか定められています。
- 信託の目的を達したとき
- 信託の目的を達成することができなくなったとき
- 受託者が受益権のすべてを固定資産で有する状態が1年間継続したとき
- 受託者が不在の状況が1年間継続したとき
- 信託財産が費用などの償還に不足しているため受託者が終了させるとき
- 信託の併合がされたとき
- 裁判による終了の命令があったとき
- 信託財産について破産手続き開始の決定があったとき
- 委託者の破産手続き開始の決定等により信託契約が解除されたとき
- その他信託契約等で定めた事由が生じたとき(受益者の死亡など)
- 委託者と受益者との合意があったとき
「信託」とは、「ご自身の大切な財産を、信頼できる人に託し、ご自身が決めた目的に沿って大切な人や自分のために運用・管理・継承してもらう」制度です。
(新堀)