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令和4年税制改正 財産債務調書制度見直し【261号】

はじめに

12月10日に、自民党・公明党は、令和4年度税制改正大綱が決定し発表がされましたが、その中の財産債務調書制度等の見直しについて、ご紹介をさせて頂きます。

財産債務調書制度とは

財産債務調書制度は平成27年度税制改正によって創設された制度です。一定以上の資産を保有する人に対し、その財産や債務を記載した書類の提出を義務付けることで、富裕層への所得税・相続税申告の適正性の確保を目的としています。

現行制度は、従前の財産及び債務の明細書を見直し、その年分の退職所得を除く各種所得の金額の合計金額が2,000万円を超え、かつ、その年の12月31日において、その価額の金額の合計金額が3億円以上の財産又はその価額の合計金額が1億円以上の国外転出特例対象資産(例えば有価証券等のこと)を有する方は必要事項を記載した財産債務調書を提出しなければならないとされています。

財産債務調書制度見直し

この財産債務調書制度等について、下記の見直しを行うとされています。(以下 令和4年度自民党税制改正大綱 参照)

財産債務調書の提出義務者の見直し

現行制度では以下の2つの条件を満たす方が財産債務調書の提出義務者に該当します。

  1. その年分の退職所得を除く各種所得の金額の合計額が2,000万円を超える場合
  2. その年の12月31日において、その合計額が3億円以上の財産又は1億円以上の国外転出特例対象財産

今回の制度見直しにより、上記の条件を満たす方のほか、その年の12月31日において有する財産の価額の合計金額が10億円以上である方も年収に関係なく提出義務者に該当することになりました。(令和5年分以後の財産債務調書について適用する)

財産債務調書の提出期限の見直し

書類の提出期限も変更されています。これまではその年の翌年3月15日までに財産債務調書を提出する必要がありましたが、改正によって翌年6月30日までに引き延ばされることになりました。

もともと保有財産・債務を正確に記載することが容易ではなく、記載事項に誤りが生じやすいという理由から提出期限が後ろ倒しになったとされています。

提出期限後に財産債務調書が提出された場合の宥恕規定の見直し

財産債務調書の宥恕規定に関してこのような記載があります。(以下 令和4年度自民党税制改正大綱 参照)

提出期限後に財産債務調書が提出された場合において、その提出が、調査があったことにより更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、その財産債務調書は提出期限内に提出されたものとみなす措置について、その提出が調査通知前にされたものである場合に限り適用することとする(国外財産調書についても同様とする。)。

つまり、今回の改正によって必要書類の提出書類がより厳格になったと言えます。

財産債務調書等の記載内容の見直し

財産債務調書の記載は容易ではありませんが、今回の改正で以下のように記載を簡略化できる範囲が拡充、あるいは新しく追加されることになりました。

事業用の未収入金/借入金/未払金/その他の債務

これまでその年の12月31日時点での価額が100万円未満の未収入金は記載を簡略化することができましたが、改正後は借入金や未払金も対象となり、価額も300万円未満にまで引き上げられました。

家庭用動産

現行の財産債務調書では「100万円未満のその他の動産の区分に該当する家庭用動産」の記載を運用上省略することが可能でしたが、同様に取得価額基準が300万円未満に引き上げられました。

一口50万円未満の預貯金口座

現行制度では預貯金に関する記載簡略化の規定は特に設けられていませんでしたが、改正に伴い、一口50万円未満の預貯金については記載を省略することが可能になりました。
青色申告決算書/収支内訳書に記載された減価滅却資産
青色申告決算書又は収支内訳書に記載する減価滅却資産は資産ごとに区分して記載する必要がありましたが、改正後は財産債務調書に総額で記載することが可能になりました。

まとめ

いかがでしょうか。提出義務者について、10億円以上の財産を有している人は、所得がない場合でも、新たに提出義務が発生(対象者が増加)します。又、所得がない人が対象となったことから、提出期限を現行の確定申告期限である翌年3月15日から、翌年6月30日と変更されています。さらに、捕捉が難しい家庭用動産の基準を100万円から300万円に緩めるといった改正が行われます。

上記の改正については、富裕層と低所得者層の税制面での不公平感への緩和を狙いとしているため、この改正については賛否両論あるとは思いますが、税理士等の専門家が関与していない提出義務者への対応が気になるところです。

(川合)

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