相続登記の義務化
国土交通省が、毎年まとめている土地白書によると、相続登記がされていないことなどが原因により約20%の土地が「所有者不明土地」となっています。このような所有者不明土地の解消を目的として、不動産登記法の改正等が行われました。これらの改正により、不動産登記における権利登記は義務化されることとなりました。
この法改正が施行(施行日は、法律の公布日から3年以内のため、2024年を目途に施行される予定です。)されると、不動産を取得した相続人に対し、「相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければならない」と定められ、違反すると10万円以下の過料に処せられます。すでに相続が発生している不動産の相続登記についても適用されます。
住所氏名等変更登記の義務化
不動産の登記名義人は、住所や氏名に変更を生じた場合、「変更の日から2年以内」に変更登記を義務付けられることとなります。これは、住所などに変更があっても変更登記がされないことが多く、所有者不明土地を生じさせる一因になっていることから新設されたものです。これに違反すると5万円以下の過料に処せられます。
相続人申告登記の創設
相続登記等の申請を行なう者が、登記官に「登記名義人について相続が開始したこと」及び「登録名義人の相続人であること」申し出ることにより、職権で申出した相続人の氏名・住所などを登記するもので、相続人間で遺産分割協議が整わない場合などの利用が想定されています。その後、遺産分割協議が「確定した日から3年以内」に所有権移転の登記を申請しなければなりません。
相続土地国庫帰属制度の創設
相続又は遺贈により土地を取得した所有者は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させるよう承認を求めることができるようになります。ただし、次のいずれかに該当する土地である場合は、承認されません。
- 建物の在する土地
- 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
- 道路その他の他人による使用が予定されている土地として政令で定めるものが含まれる土地
- 土地汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質により汚染されている土地
- 境界が明らかでない土地その他の所有権の在否、帰属又は範囲について争いがある土地
- 崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
- 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に在する土地
- 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に在する土地
- 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
- 上記に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの
また、申請者は、その土地の管理に必要な10年分の費用を納付して初めて土地の所有権が国庫に帰属することになります
(中嶋)