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2021年の日本経済の見通し【242号】

※次年の記事はこちら「2022年の日本経済の見通し【263号】

謹んで新春のお祝詞を申し上げます。
昨年中は格別のご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。

マイナス成長に陥った2020年の日本経済

昨年の日本経済は、新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、大きく落ち込みました。国内では外出自粛などにより個人消費が急激に減少したうえ、輸出の大幅な減少により製造業の生産活動が低下しました。そのことが、雇用環境の悪化を招き、所得も低下させました。賃金の下落が続いているため、家計が消費を控え、貯蓄に走るという悪循環を生み、2020年の実質GDP成長率は前年比マイナス5%以上の戦後最悪のマイナス成長に陥ったと思われます。

2021年の日本経済はどうなるのか?

2021年の日本経済は、2020年の落ち込みを取り戻すことができるかが大きな関心事だと思います。2021年は、仮にワクチンが普及して新型コロナの感染が落ち着き、経済が順調に回復に向かい、2020年のマイナス成長からプラス成長になり、2020年の落ち込みを取り戻すシナリオを期待していますが、日本経済の回復ペースは緩やかなものになりそうです。例えば、OECDは昨年12月発表の経済見通しにおいて、2021年の日本の実質GDP成長率をプラス2.3%と推計しています。2021年の日本経済の回復は、2020年の落ち込みの半分を取り戻せるかどうかぐらいだと思います。

日本政府は強気の見通し

日本政府は、2021年度の実質GDP成長率の見通しをプラス4.0%とする経済見通しを閣議決定しています。前述の成長率とは、暦年と年度の期間の違いこそありますが、政府は強気の見方をしています。2021年度は、東京五輪・パラリンピック開催の効果があるほか、追加経済対策が消費や投資などを刺激し、景気が回復するシナリオを描いています。この試算では、2021年度は個人消費が3.9%増加することを想定しています。個人消費は、2020年度に大きく落ち込んだため、反動で増加すると考えられます。しかし、足元で新型コロナの感染再拡大が繰り返されていることから、感染拡大を予防するための慎重な行動が個人消費の回復を抑制するものと思われます。
さらに日本政府は、企業の設備投資についても、2.9%増加することを想定しています。日本政府による追加経済対策は、デジタル改革やグリーン社会の実現などコロナ後を見据えたものが多く、目先の景気浮揚効果は政府の予想ほど大きくないと思われます。

コロナ2年目の日本経済は低成長

2021年の日本経済プラス成長のけん引役は、輸出の回復だと考えています。中国経済はコロナ禍からの回復軌道に乗っており、2021年の成長率は、約8%の高成長が見込まれます。多くの先進国も少しずつ回復に向かうことが見込まれます。世界経済の回復に伴い、日本の企業の売上は、輸出に関連する業種から回復すると思います。ただし、足元では輸出の伸びが鈍り、生産回復が足踏みしている状況にあるため、世界の需要回復が鈍いことが懸念材料となっています。
仮に企業の業績が回復してきたとしても、企業経営者は慎重に設備投資を行うため、設備投資の回復には少し時間がかかります。また、給与が回復しても、将来の不況に備えて、個人も貯蓄をため込むため、個人消費の回復も鈍いものになると考えられます。
このように、人々が感染を予防する行動を続けることから、国内の個人消費の回復には時間がかかり、新型コロナによる打撃を受けた内需型の業種は、売上の回復が遅れると思います。一方、新型コロナ特需があった業種においても、新型コロナの感染が落ち着くことで、逆に売上が減少する可能性があります。
以上のことから、新型コロナの影響を受けた企業の2021年の売上高は、2020年よりは回復するものの、コロナ前の2019年の水準に戻ることは難しいと思われます。中小企業を取り巻く経済環境は、回復に向かうものの、そのペースは緩やかなものが続くため、2019年以前の水準に回復するまでの期間が長期化するリスクへの備えが、2021年の中小企業経営に求められることになりそうです。

本年も何卒よろしく、ご愛顧のほどお願い申し上げます。

小島淳次

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