政府は、新型コロナウイルス感染症の影響により厳しい状況に置かれている納税者に対し、緊急に必要な税制上の措置を講じていくこととしています。緊急経済対策に盛り込まれた主な税制上の措置(案)や当面の税務上の取扱いの概要は、以下のとおりです。
なお、納税猶予の特例と固定資産税の軽減措置の詳細は、既報.227号をご参照ください。
〔緊急経済対策に盛り込まれた主な税制上の措置(案)〕
① 納税猶予の特例(国税・地方税)
令和2 年2 月1 日以後における一定の期間(1か月以上)において、収入に前年同期比概ね20%以上の減少があり、
一時の納税が困難と認められる場合、無担保かつ延滞税なしで1年間、納税を猶予することができるようになります。
(令和2 年2 月1 日から令和3 年1 月31 日までに納期限が到来する国税・地方税に適用)
② 欠損金の繰戻しによる還付の特例
現在、資本金1 億円以下の法人に認められている青色欠損金の繰戻し還付について、資本金1億円超10 億円以下の法
人(大規模法人を除く。)も適用できるようになります。
(令和2 年2 月1 日から令和4 年1 月31 日までの間に終了する事業年度に生じた欠損金に適用)
③ テレワーク等のための中小企業の設備投資税制
中小企業者等が、テレワーク等のための設備の取得等をした場合に、中小企業経営強化税制の適用を受けることがで
きるようになります。
④ 中小事業者等が所有する償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税等の軽減措置
以下の中小企業者等が所有する償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税及び都市計画税について、令和3 年度課税
の1 年分に限り、以下の割合の課税標準が軽減されます。
⑤ その他
・中止等された文化芸術・スポーツに係る一定のイベントについて、入場料等の払戻請求権を放棄した場合、放棄金額
が寄附金控除(所得控除又は税額控除)の対象とされます。
・住宅への入居が遅れた場合における住宅ローン控除の適用要件が弾力化されます。
・売上げが著しく減少した場合、消費税の課税事業者選択の変更が可能となります。
・生産性革命の実現に向けた固定資産税の特例措置について、適用対象が拡充されます。
〔新型コロナ感染症に関連する当面の税務上の取扱い(法人税関係)〕
① 業績が悪化した場合に行う役員給与の減額
役員給与の減額改定は、「業績悪化改定事由」に該当する場合、改定前後の役員給与は、それぞれ定期同額給与に該
当し、損金算入することになります。
経営状況が著しく悪化(業績等が急激に悪化して家賃や給与等の支払いが困難となるなど)し、取引銀行や株主との
関係からもやむを得ず役員給与を減額しなければならない状況にある場合は、この「業績悪化改定事由」に該当するこ
とになります。
①´業績の悪化が見込まれるために行う役員給与の減額
役員給与の減額等といった経営改善策を講じなければ、客観的な状況から判断して、急激に財務状況が悪化する可能
性が高く、今後の経営状況が著しく悪化することが不可避であるなどの理由も、「業績悪化改定事由」による改定に該
当する場合があります。
② 賃貸物件のオーナーが賃料の減額等を行った場合
企業が、賃貸借契約を締結している取引先等に対して賃料の減額を行った場合(既に生じた賃料の減免等を行う場合
も同様)、その賃料を減額等したことに合理的な理由がなければ、原則として、寄附金を支出したものとして税務上、
取り扱われます。
しかし、賃料の減額等が、例えば、次の条件を満たす場合、実質的には取引先等との取引条件の変更と考えられ、そ
の減額分は、寄附金として取り扱われることはありません。
㋑ 取引先等の収入が、新型コロナに関連して減少し、事業継続が困難となったこと
㋺ 賃料の減額等が、取引先等の復旧支援等を目的とし、それを書面等で確認できること
㋩ 賃料の減額等が、取引先等に被害が生じた後、相当の期間内に行われたこと
②´賃借人(事業者)が賃料の減免を受けた場合
減免相当額の受贈益と既に費用計上した支払賃料が同額となるため、結果として課税が生じることはありません。
③ 企業が生活困窮者等に自社製品等を提供した場合
自社製品等の提供が、新型コロナウイルス感染症に関する対応として、不特定又は多数の生活困窮者等を救援するた
めに緊急、かつ、今般の感染症の流行が終息するまでの間に限って行われるものであれば、その提供に要する費用(配
送に係る費用も含みます。)の額は、寄附金以外の損金として、その提供時の損金の額に算入することができます。
④ マスクを取引先等に無償提供した場合
マスク等の無償提供が、新型コロナウイルス感染症に関する対応として、緊急、かつ、感染症の流行が終息するまで
の間に限って行われるものであり、その提供を行う取引先等におけるマスクの不足により、自社の業務に直接又は間接
的な影響が生じるなど一定の条件を満たすものであれば、その提供に要する費用(マスク等の購入費用、送料等)の額
は、寄附金以外の費用に該当します。
※令和2年4 月16 日現在の法令等に基づいて作成しています。関係法案等の成立時期、具体的な取扱いや適用要件の詳細につきましては、担当者までお気軽にお問い合わせください。
(小島)