2020年4月からの保険診療の金額を定めた診療報酬の改定内容がまとまりました。
診療報酬の本体(技術料、人件費)が+0.55%、薬価(薬の公定価格)は▲0.99%、医療材料価格は▲0.02%、全体で ▲0.46%です。本体+0.55%のうち0.08%を「救急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応」に充て、残りの0.47%を各科に配分し、医科が+0.53%、歯科が+0.59%、調剤が+0.16%となっています。
厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会では、改定にあたっての基本認識として、
・健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現
・患者・国民に身近な医療の実現
・どこに住んでいても適切な医療を安心して受けられる社会の実現、医師等の働き方改革の推進
・社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和
を挙げています。
上記の基本認識のもとに決められた方針は、
1.医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進
【具体的方向性の例】
・医師等の長時間労働などの厳しい勤務環境を改善する取組の評価
・地域医療の確保を図る観点から早急に対応が必要な救急医療体制等の評価
・業務の効率化に資するICTの利活用の推進
2.患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現
【具体的方向性の例】
・かかりつけ機能の評価
・患者にとって必要な情報提供や相談支援、重症化予防の取組、治療と仕事の両立に資する取組等の推進
・アウトカムにも着目した評価の推進
・重点的な対応が求められる分野の適切な評価
・口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、生活の質に配慮した歯科医療の推進
・薬局の対物業務から対人業務への構造的な転換を推進するための所要の評価の重点化と適正化、院内薬剤師業務の評価
・医療におけるICTの利活用
3.医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進
【具体的方向性の例】
・医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価
・外来医療の機能分化
・質の高い在宅医療・訪問看護の確保
・地域包括ケアシステムの推進のための取組
4.効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上
【具体的方向性の例】
・後発医薬品やバイオ後続品の使用促進
・費用対効果評価制度の活用
・市場実勢価格を踏まえた適正な評価等
・医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価(再掲)
・外来医療の機能分化、重症化予防の取組の推進(再掲)
・医師・院内薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用の推進
2年前の改定方針では3番目に掲げられていた働き方改革の推進が今回の改定においては1番目に掲げられ【重点課題】とされましたが、先述の通りその具体的方向性の例として「医師等の長時間労働などの厳しい勤務環境を改善する取組の評価」が挙げられています。この件について、団塊の世代が後期高齢者に入る『 2025年問題 』がまさに目前に迫っており制度の持続可能性が喫緊の課題であるのに、働き方改革だけが重点課題になっていることを危惧する声も上がっているようです。
(樋口)