2019年の消費者物価指数
2019年10月に5年半ぶりに消費税率の引き上げが実施されました。消費税率が引き上げられますと、通常は物価が押し上げられますが、総務省が1月24日に発表した消費者物価指数によりますと、消費税率引き上げによる物価の押し上げ効果は限定的だったと言えます。
2019年の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除いた総合で(2015年を100として)101.8と前年比0.6%上昇しました。プラスは3年連続となりましたが、伸び率は2018年の0.9%から0.3ポイント低下しました。2019年10月に消費税率の引き上げがあったにもかかわらず、物価の伸びは小幅にとどまりました。
日本銀行は、物価上昇率2%を目標としていますが、異次元の金融緩和が始まった2013年以降でこの目標を達成したのは、消費税率が5%から8%に引き上げられた2014年の2.6%だけです。そもそも前回(2014年)の消費税率引き上げは、年前半の4月に実施されたうえ、税率の引き上げ幅も3%と今回の2%より大きく、消費税率の引き上げが物価上昇率を1.5ポイントほど押し上げていました。
生鮮食品を除く消費者物価指数(2015年=100)
消費税率引き上げ後も伸びが鈍い消費者物価
消費税率の引き上げ後(2019年10月)の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除いた総合で102.0と前年同月比0.4%の上昇で、消費税率の引き上げが実施されたにもかかわらず低水準の上昇でした。
消費者物価指数は税込みですから、消費税率が引き上げられれば通常はその分だけ上昇します。2019年の消費税率引き上げでは、飲食料品への軽減税率の導入などがあり、総務省の機械的な試算では、10月の物価上昇率への消費税率引き上げの寄与度は0.77%でした。さらに、幼児教育・保育の無償化などの支援策が0.57%のマイナス要因になったため、これを差し引きますと消費税率引き上げの寄与度は0.2%分にとどまったことになります。つまり消費税率引き上げ効果を除いた物価上昇率は0.2%程度にしかならず、10月の消費者物価の上昇幅は、実際はさらに低い水準であったと考えられます。
伸び悩む消費者物価
消費税率を引き上げても物価上昇が緩やかであれば、個人消費への悪影響は少なくて済むものと考えられますが、物価の上昇が鈍いのは、携帯電話通信料の値下げも要因の一つではあるものの、消費の基調が弱いことも要因として考えられます。
2019年の消費者物価指数は、インバウンドの活況により教養娯楽が103.8に上昇しているほか、材料や人件費の高騰を映した食品が104.3に上昇し、非耐久財が上昇しているのに対し、住居が99.8、家具・家事用品が100.2にとどまるなど、家電などの耐久財が低迷しています。必需品の物価は上昇しているものの、必需品以外の物価の上昇が鈍っているようです。需要が鈍いので、企業も必需品以外の値上げに慎重になっているものと思われます。
雇用・所得環境が良好であることから、個人消費は堅調と言われておりますが、需要の増加によって物価を押し上げるほどの力強さはないようです。
(小島淳次)