ニュース

【207号】働き方改革関連法施行と税制

 新年度を迎えるにあたり、昇給額の算定や給与の見直しを実施している企業が多いと思います。また、働き方改革関連法が順次施行されるにあたり就業規則等の見直しを実施している企業は少なくないかもしれません。今回はこの関連法の概要確認とそこに絡めた税制について触れてみたいと思います。

 

 労働基準法など関連法の何が変わるのかが気になるところですが、大企業と中小企業ではそれぞれの項目ごとに適用開始時期が異なりますので、まずは規模の判定です。中小企業(個人事業含む)とは下記に当てはまる企業です。下記のいずれにも当てはまらない企業は大企業となります。

  小売業・・・・・・・・資本金の額または出資金の総額が5,000万円以下、または常時使用する労働者数50人以下

  サービス業・・・・・・資本金の額または出資金の総額が5,000万円以下、または常時使用する労働者数100人以下

  卸売業・・・・・・・資本金の額または出資金の総額が1億円以下、または常時使用する労働者数100人以下

  上記以外の業種・・・・資本金の額または出資金の総額が3億円以下、または常時使用する労働者数300人以下 

 

 次は内容を確認します。なお、カッコ内は適用開始時期です。

  時間外労働の上限規制

    残業時間を原則月45時間かつ年360時間以内、繁忙期であっても月100時間未満、年720時間以内にするなどの上限を設け

   る。(大企業2019/04~、中小企業2020/04~)

  有給休暇の消化義務

    年10日以上の有給休暇が発生している労働者に対しては、会社は必ず5日の有給休暇を取得させなければならない義務を負

   う。(すべての企業2019/04~)

  中小企業の割増賃金率の猶予措置廃止

    中小企業には適用が猶予されていた、月の残業時間が60時間を超えた場合、割増賃金の割増率を50%以上にしなければな

   らない。(すべての企業2023/04~)

  同一労働・同一賃金の推進

    規・非正規の不合理な格差をなくすため、仕事内容や配置転換の範囲が正社員と同じである場合は賃金や休暇、福利厚生

   など同じ待遇確保(均等待遇)を企業に義務付ける。仕事内容などに違いがある場合も、不合理な格差禁止(均衡待遇)。

   格差について企業は労働者に内容や理由を説明しなければならない。(大企業2020/04~、中小企業2021/04~)

  高度プロフェッショナル制度

    年収1,075万円以上で、一定の専門知識を持った職種の労働者を対象に、労働時間規制や割増賃金支払の対象外とする(本

   人の同意等が必要)。(すべての企業2019/04~)

 

 その他、勤務間インターバル制度の努力義務(すべての企業2019/04~)、産業医の権限の強化(すべての企業2019/04~)、フレックスタイム制の清算期間の延長(1か月→3か月)(すべての企業2019/04~)などがあります

 

 この働き方改革関連法の影響で人件費が増加した場合に検討すべきなのは、所得拡大促進税制です。会社や個人事業者が負担すべき人件費の増加、その負担増を和らげるため法人税および所得税の所得拡大促進税制を利用できるかもしれません。これまでも同税制はありましたが、平成30年度の改正で税額控除率を拡充したほか計算方法が簡素化されました。要件を満たせば人件費増加額の最大20%(中小企業は最大25%)が減税されます(2018年4月1日から2021年3月31日までの間に開始する各事業年度に適用)。詳しくは≪ニュース第187号第189号をご覧ください。

 

 そして、所得拡大促進税制のいくつかの要件のうちのひとつである設備投資についてですが、その設備投資が中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づく設備投資である場合は、即時償却や税額控除が認められます(2021年3月31日までの取得分)。これには働き方改革に資する設備(休憩室に設置される冷暖房設備や作業場に設置されるテレワーク用PC等)も含まれています。なお、この認定を受けるためには設備を取得する前(原則)の申請手続が必要となります。

 

 ※税制上の大企業と中小企業の判定は働き方改革関連法における判定とは異なります。

 

(樋口)

新着情報

税理士法人中央総研 知識と経験を活かし、お客さまに寄り添う
NEW
2019年04月26日 【208号】賃上げ促進税制(所得拡大促進税制)
一覧に戻る
OLD
2019年03月12日 【206号】日本の景気は後退局面に入ったのか?

別の記事も読む

行事