日本政府は、1月の月例経済報告において、2012年12月に始まった今回の景気回復期間が、「今年1月で74か月となり、戦後最長となった可能性がある。」と表明していました。
2月の月例経済報告においても、全体の基調判断で「景気は、緩やかに回復している。」を14か月連続で据え置きました。
ただ全体の基調判断は据え置かれたものの、個別項目で下方修正が出てきています。
日本政府は、1月の月例経済報告で「輸出」の判断を「おおむね横ばいとなっている。」から「このところ弱含んでいる。」に下方修正していました。この輸出の鈍化が生産や企業業績に連鎖しており、2月の月例経済報告では、「生産」と「企業収益」の判断を引き下げました。
「生産」は、電子部品・デバイスや生産用機械等で、海外向け出荷・受注が減速していることを反映し、判断を「緩やかに増加している。」から「一部に弱さがみられるものの、緩やかに増加している。」に下方修正しました。「生産」の判断が引き下げられたのは、2015年10月以来、40か月ぶりとなります。
「企業収益」についても、上場企業の10月~12月期の経常利益が前年同期比で減益となったことなどをふまえ、判断を「改善している。」から「高い水準にあるものの、改善に足踏みがみられる。」に下方修正しました。「企業収益」の判断引下げも、2016年6月以来、32か月ぶりです。
このように個別項目で下方修正が出ているものの、政府は全体の基調判断を据え置いた理由として、「生産活動全体としては、緩やかに増加しているとの基調は変わっていない。」うえに「個人消費は、持ち直している」ことを根拠としています。しかし、先行きを不安視する指摘も出ています。
日本政府は、1月に中国経済の判断を「景気は持ち直しの動きに足踏みがみられる。」から「景気は緩やかに減速している。」に引き下げ、2月にもユーロ圏と英国の判断を引き下げました。海外経済の減速は、日本の輸出に影響を与えています。
日本の「輸出」は、昨年12月と今年1月は2カ月連続で前年同月比減少となりました。
昨年12月分については、半導体等製造装置、通信機等の輸出が減少したため、対前年同月比3.9%減少しました。今年1月分についても、船舶、半導体等製造装置等の輸出が減少し、対前年同月比8.4%減少しました。特に今年1月の中国向け輸出は、前年同月比17.4%減と大きく落ち込み、前の月の7.0%減から一段と落ち込みました。
この輸出が振るわないことが、日本企業の生産に影響を与えています。3月7日に発表された1月の景気動向指数(CI)速報値(2015年=100)は、一致指数が97.9と前月と比較して2.7ポイント下降しました。企業の生産・出荷の減速が一致指数にマイナスに寄与しています。一致指数は、3か月連続の下降となりました。
一致指数の基調判断も下方修正され、前月までの「足踏み」から「下方への局面変化」に引き下げられました。「下方への局面変化」は、「事後的に判定される景気の山が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す。」と定義されています。
景気動向指数の基調判断が下方修正されたことで、景気後退局面に入ったとみるか否か、景気への見方が分かれています。輸出や生産に弱さが見られるものの、雇用環境は良好であるため、国内消費は底堅いとの見方もあります。東日本大震災があった2011年3月や欧州債務危機が再燃した2012年9月においても、基調判断は「下方への局面変化」になりましたが、景気は後退していたと判断されませんでした。景気の「山」の正式な認識は、内閣府の景気動向指数研究会が約1年後に判定します。当面、正式な判定は示されないため、政府が3月の月例経済報告の景気認識を据え置くか注目する必要がありそうです。
(小島)