日本政府は、1月29日に月例経済報告を公表し、日本経済の基調判断を現状「景気は、緩やかに回復している。」と判断を据え置きました。2012年12月に始まった今回の景気回復期間は、「今年1月で74か月となり、戦後最長となった可能性がある。」と表明しました。
これまでの景気回復期間では、いざなみ景気と呼ばれる2002年2月から2008年2月までの73ヵ月が最長でした。バブル景気の景気回復期間でも1986年12月から1991年2月までの51か月間でしたので、今回の景気回復期間は、非常に長く続いています。
今回の景気回復を支えてきたのは、企業収益の増加です。内閣府によりますと、今回の景気回復期間における企業収益の増加幅は35.1兆円であり、いざなみ景気の25.2兆円、バブル景気の17.1兆円を上回り、企業収益は過去最高となっています。就業者数の増加幅も大きく、今回の景気回復期間では375万人増加し、バブル景気の増加幅396万人に近い増加幅になっています。
ただ今回の景気回復期間は成長率が高くありません。今回の景気回復期間における実質国内総生産(GDP)成長率(年率)は1.2%であり、バブル景気の5.3%を大きく下回るだけでなく、いざなみ景気の1.6%をも下回ります。「実感なき景気回復」と評されています。成長率が低いのは、景気の回復が続いているにも関わらず、個人消費がほとんど伸びていないからです。2014年の消費税増税後の景気足踏み期間が長く続いたことも影響したと思われます。
主な景気回復期間におけるGDP成長率(年率)
日本経済の基調判断の先行きについては、「雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響や、中国経済の先行きなど海外経済の不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。」と述べています。
特に中国向けの輸出が弱含んでおり、中国からの工作機械の受注が減少している点を指摘し、中国経済の判断を「景気は緩やかに減速している」と「持ち直しの動きに足踏みがみられる」から引き下げました。
日本の景気回復は、輸出の増加に支えられてきました。日本の輸出相手国1位の米国と2位の中国に対する輸出が落ち込むことになりますと、日本経済は大きな影響を受けることになるでしょう。外需に頼ってきた今回の景気回復は、輸出が鈍りつつあるなかで、回復の持続力が失われつつあります。景気が拡大から後退に転じる山がいつになるのか?今後の動向を注視する必要がありそうです。
(小島)