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【194号】相続分野の民法改正 その1

 1980年に配偶者の法定相続分を1/3から1/2に引き上げて以来の民法の相続分野の規定を40年ぶりに見直す民法改正案が衆院で賛成多数で可決されました。

 改正のポイントは、Ⅰ 配偶者居住権の保護、Ⅱ 遺産分割前に生活費・葬儀費用を引き出せるようにする、Ⅲ 被相続人の介護等で貢献した親族にも金銭請求を可能にする、Ⅳ 自筆証書遺言の方式緩和、Ⅴ 遺留分制度に関する見直し、Ⅵ 不動産登記の義務化他の6点で内容は以下の通りです。

Ⅰ配偶者居住権の保護

 高齢化社会が到来した現在、残された配偶者が長生きするケース、また老親が子供と同居しないケースが増加しています。現行法では、被相続人所有の建物に無償で居住していた妻が、相続開始とともに遺産分割の為に自宅の売却や退去を迫られて住み続けることが出来なくなってしまう等の問題が生じていることへの対策です。

 (1) 配偶者短期居住権の創設

  配偶者短期居住権とは、相続開始時に被相続人の居住建物で同居していた配偶者は、一定期間その住宅に無償で住み続けるこ

 とが出来るとする権利です。

  一定期間とは、遺産分割対象の建物の場合は、遺産分割が終了するまで又は相続開始の時から6ヶ月のいずれか遅い日までで

 す。その建物が第三者に遺贈された場合など遺産分割対象でない建物の場合には、建物の所有者から短期居住権消滅の申入れを

 受けた日から6ヶ月です。

  この短期居住権が発生するのは住宅の居住部分(店舗使用部分などは対象外)のみですが、遺言等が無くても当然に発生しま

 す。

  また遺産分割にあたって配偶者の取り分は減りません。この権利は、配偶者の死亡や住宅所有者からの消滅請求、配偶者長期居

 住権の取得等で消滅します。

 (2) 配偶者長期居住権

  配偶者の居住を保護するため、住宅の権利を「所有権」と「居住権」に分割して、被相続人の住宅で同居していた配偶者は、

 たとえ所有権が別の相続人や第三者に渡っても原則としてその終身の間、無償で住み続けることが出来ます。この権利は、遺産

 分割(協議・審判),遺贈,死因贈与で定めることで発生し、期間についてその遺産分割や遺言で終身より短い期間とすることが出来ま

 す。またこの権利は住宅の全ての部分(居住部分以外も含む)まで及びます。第三者対抗要件として登記も可能で、施設に入所す

 るなどしても譲渡や売買は出来ません。遺産分割の際には考慮され、配偶者の他の財産の通り分が減ることになります。

 (3) 遺産分割の対象からの除外

  結婚20年以上の夫婦間で、生前贈与や遺言で譲り受けた住居は「遺産とみなさない」という被相続人の意志があったと推認し

 て、遺産分割の対象から除外します。この場合には、配偶者は住居を離れる必要が無いだけでなく、他の財産の配分が増え老後

 の生活の安定に資することができます。

Ⅱ 遺産分割前に生活費・葬儀費用を引き出せる

 現行法では、遺産分割協議が成立するまで銀行等の金融機関は故人の遺産の払い戻しに応じませんでした(いわゆる「口座の凍結」)。改正法では、共同相続された預貯金について遺産分割前でも相続人に仮払いする下記の2つの制度を創設しました。

 (1) 家庭裁判所の手続き(保全処分)を利用する方法・・・要件が緩和されている。

 (2) 裁判所外で相続人単独での払戻しを認める方法・・・手続きが容易である。

次月に続く

(蒔田)

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