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「年収の壁」103万円から160万円へ【341号】

所得税の課税最低限は160万円に

「年収103万円の壁」とは、所得税がかからない収入の上限額で、それを超えると所得税の負担が生じる境目(課税最低限)のことを言います。この「年収103万円の壁」が160万円まで引き上げられる見通しとなりました。

政府・与党が昨年末に公表した令和7年度税制改正の当初案(大綱)は、年収の壁を123万円まで引き上げる内容でしたが、年明けからの協議を経て、当初案が修正され、年収の壁が160万円にまで引き上げられることになります。

現在の所得税では、給与収入から差し引く「給与所得控除」の最低保障額55万円と、所得から差し引く「基礎控除」48万円の合計103万円を年収が上回りますと、所得税が発生してしまいました。当初案と今回の修正案により、給与所得控除の最低保証額が55万円から65万円に、(年収200万円以下の人の)基礎控除が48万円から95万円に引き上げられ、これらの合計160万円が課税最低限となります。

基礎控除の上乗せは2年間限定措置も(年収200万~850万円)

修正案により、「基礎控除」が増額されて、課税最低限が引き上げられることになりますが、この修正案では、年収が上がるにつれて基礎控除が小さくなる仕組みが取り入れられています。しかも、年収200万円超から850万円以下の人に対する基礎控除への上乗せ措置は、令和7年と令和8年の二年間の限定措置となっています。年収に応じた基礎控除額は、以下の通りです。

(注)単身の給与所得者の場合

給与所得控除と特定親族特別控除は当初案(大綱)通り

一方、給与収入から差し引く「給与所得控除」については、当初案からの修正はなく、年収162.5万円以下の人に適用される最低保障額(現行:55万円)が、当初案通り65万円に引き上げられますが、年収162.5万円超の人についての改正は行われない見通しです。

また、学生らの年収の壁を引き上げるために設けられる「特定親族特別控除(仮称)」についても、当初案からの修正は行われない見通しです。特定親族特別控除は、19歳から22歳までの子の年収が123万円(現行:103万円)を超えても、子の年収150万円までは、親が特定扶養控除と同額(63万円)の控除を受けられ、子の年収が150万円を超えた場合でも親が受けられる控除額が段階的に逓減し、子の収入が一定額を超えると消失する仕組みの控除です。

所得税の一人当たり減税額は2~4万円

上記の改正は、令和7年分以後の所得税に適用されます。給与所得者については、令和7年分を年末調整で適用し、令和8年分以後は給与からの源泉徴収で適用されます。

基礎控除と給与所得控除の改正には、所得制限が設けられたため、年収2,545万円以下の人が減税の恩恵を受けることができます。また、令和7年と8年の二年間は、年収が上がるにつれて基礎控除が小さくなる仕組みを取り入れていますので、所得税の1人当たり減税額が2万円から4万円の幅に収まるようになっています。

(小島淳次)

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